【会話練習】「余白」のある絵本を使う
ミツイ直子
今や日本でも気軽に英語の絵本が手に入ります。英語の絵本で学べることは非常に多いので、英語の絵本を授業に活用する先生も多いと思います。今回は、そんな英語の絵本の中でも英語の先生に選ばれにくい「文字の少ない絵本」の活用法についてお話をしたいと思います。
私が児童に英語を教えていた時に積極的に活用していたのが「文字の少ない絵本」、つまり「余白」のある絵本です。書かれている文字が少ないので、生徒と一緒に絵本を見ていくうちに「自然と会話が始まる」ことが多く、まだ生徒が英語での発話に対して壁を感じている時でも「これは何?(物の名前確認)」「自転車はどこにある?(物の位置関係の確認)」「この女の子は何をしているの?(動作確認)」というような、各生徒に適したレベルの質問をして、無理ない発話を促すことが出来ます。
こういった質問を通して生徒の前置詞使用や熟語使用を確認したり、正しい使い方のモデリングをすることも出来ますが、ここで一番のポイントとなるのは、「制限のある中で(完全に自由ではない中で)、でも自由に話す練習が出来る」ということで生徒の英語上達に非常に良い環境を創り出すことが出来るということです。また、こうして先生から沢山の質問をすること(疑問を持っていることを示すこと)で、生徒側の意識として「質問をすることに対して(疑問を持つことに対して)のハードルが下がる」というポジティブな効果も挙げられます。
もちろん、上記のような質問は通常の絵本を使っても行えますが、ストーリー性が高い絵本を使うと生徒がどうしても内容を気にし過ぎてしまって自由な発想が行いにくいことがあります。その点、余白が多く、書かれている文字が少ない絵本だと思う存分にCreativityを楽しめる傾向があります。生徒に自分で物語を作ってもらったり(Story Telling/Narrationの練習)することも出来ますし、複数の生徒に教えている場合でも、そういった絵本を見ながら、ひとりずつ順番に物語を作っていく※という共同の物語創作のアクティビティーを行うことも可能です。
※ひとり一文ずつ順番に言い、物語を全員で作っていくアクティビティー。
例:Aさん「昔々あるところに、可愛い女の子がいました」
Bさん「その女の子は赤い靴を履いていたので、Shoesyと呼ばれていました」
。。というように、続けていく。
通常の絵本を読み聞かせるように先生がStory Telling/Narrationをしていくとしても、余白のある絵本の場合、先生のStory Telling/Narration自体も読む度に変わりますし、書かれている文章を読むのとはまた違った臨場感溢れる読み聞かせが可能となります。
日本の先生は「正しいこと」に拘る傾向がありますが、少し英文を間違えてしまっていても良いので、時には臨場感溢れる「その時、その瞬間に出てくる英文」を生徒と一緒に楽しむのも良いのではないかと思います。
私が個人的によく使っていたのはLittle Peopleシリーズです。
こちら、一部の絵がFlip 式で隠されているので、赤ちゃんでも楽しめます。また、それぞれの本で「数字」「色」「形」などEducational Themeも決まっているので、そういったシンプルな概念を教えていくのにもお薦めです。
また、こちらの本は少しストーリー性があるものの、文字自体が非常に少ないので、生徒に実際にStory Telling/Narrationをさせるのに最適です。
私が児童相手にこの絵本を使って英語を教えた時には、この絵本に文字が少ないからこそ、子ども達は内容に関連したイラストに注目せずに自由に絵を楽しみ、大人が気付かないような面白いポイントを沢山見つけてくれました。ちょっとした背景の小さなポイントを軸にして、大人では思いつかないような物語創作をしたりもしました。
勘の良い方はお気づきだと思いますが、「文字の少ない絵本」(「余白」のある絵本)は工夫次第で大人の生徒さんに対しても使えます。是非、挑戦してみてください。
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