日本人に、英語は本当に必要ですか?
English Teachers Association of Japan の フォーラムにて以前話題になったトピックをご紹介させてください。
「日本人も驚き。「英語ができないのは、幸福な国の証」だった」というまぐまぐニュースさんの記事ですが、記事内には以下の内容が書かれています。
1)マイクロソフト日本の取締役でも「英語はほとんど話せなかった」
2)英語は下手でも、仕事ができればいい
3)本当の英語力が必要なのは日本人の数%
4)自国語で大学教育までできる国は珍しい
5)英語ができないのは、幸福な国の証
6)国際派日本人にお勧めの英語勉強法
さて、本当に英語は日本人に必要ないのでしょうか? 以下、English Teachers Association of Japan のメンバーの方々のご意見です。
必要です。この本、私も一年前に読みました。そのときに職場の仲間用に書いたものがこれです(抜粋):
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先日、「日本人の9割に英語はいらない」という本を読んだ。内容はほとんど「その通り」だと思った。ただ、実態は正しく書かれていると思うが、私は違うふうに考察する。「だから英語は要らない」というふうには考えない。もしも英語ができたら、ビジネスの機会は飛躍的に広がるはず。日本全体として。もう遅いかもしれないが、仮に日本国民の英語の水準が高かったら、欧米の企業の多くが、アジアの拠点を日本においたに違いない。シンガポールじゃなくて。ある調査の結果をみてたら、外国企業が日本を拠点にする阻害要因の上位に「英語が通じないこと」があった。シンガポールでは、逆に「英語が通じる」が選定の理由になっている。
「日本人の9割に英語はいらない」理由のひとつは、「高度な教育が日本語で受けられるから」。他の国では考えられない。多くの情報は日本語で入手可能というのも理由のひとつ。
でも、英語ならば、もっと多くの情報を得られる。もっとはやく情報を得られる。情報が船で運ばれてきた時代とは違うのだ。航空便で一週間かかった時代とも違うのだ。英語ができれば、もっとチャンスがある。
英語のために、大切な時間を浪費するのはよくないし、もっと他に学ぶことももちろんある。が、だからといって、「要らない」と決めつけるのは間違いだし、まして、幸か不幸か1.5%*の中に身を置くことになったひとは、チャンスを失わないために、時間とエネルギーを英語に使わなければならない。
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※1.5%というのは、これの前に「英米相手に日常的に英語を使う人の割合は日本人の1.5%くらいだろう」と書いていて、私たち(この職場)は「その1.5%だ」ということを言っています。
「幸福な国」は過去の話だと私は思います。私の勤め先(外資系企業)には、英語能力不足により、たいへんな目にあった人が複数います。いや、いました。努力したかどうかより、点数がどうかより、最後は実務の能力で判断されます。私の職場はその社会の変化の先の方を行っているとは思いますが、この波は確実に広がると思います。
日本では「できたらいいな」。それは「できないのが普通」だからです。他の国では「できるのが普通」で、できないと困る。ひと昔前(相当前かな)に「パソコンができたらいいな」だった時代と比較したらいいかも知れません。今ではパソコンができないと機会を失いますよね。他の国は、植民地であったり、嫌でも隣国とつきあう必要があった。植民地であったアジアの国々は、自国の言語を修正までして対応してきたとききます。日本はそうじゃない。そこが「幸福な国」の要因のひとつだと思うのですが、それが災いしている。過保護だったわけですね。
工場はどんどん外へ出る。必要なものは輸入する。自国の中では物を流通させているだけで生産はしない。生産をしなければ普通なら生活は成り立たないはずなのだけど、みんなが生活できているのは外国とのやりとりがあるから。必然的にそこに関わる人は増えるわけで、外国との交渉ができることが当たり前にならなければ将来は暗いと、私は本気で思っています。 (鈴木裕氏)
私もまったくその通りだと思います。
海外勤務を経験しましたが、日系企業だったためアメリカ人はかなり日本人慣れしていたところはありますけど、やっぱりできる人とできない人の間にはある種の壁もできることも事実です。
日本は、今現在ですが社会構造的に「英語がなくても生活していけてしまう」ことが、「英語をやらなくてもいいんじゃない」と思ってしまう最大の要因だと思っています。でも、一歩外へ出るとそうではないと分かっていない人が大半なんだと思います。
他のアジア地域は、いろいろな理由があるにせよ英語を重要視して国が力を入れてやっている。他のアジア人と日本人の差を見ると、危機感を持たずにはいられません。
鈴木先生の言うとおり、「幸福な国」というのは過去の話だと思います。近い将来、きっと大きなハンディとなって日本を後退させると思います。
記事の中で、英語を公用語にした楽天やファーストリテイリングが学生に敬遠されているということを書いてましたが、私は企業がもっと力を入れて英語をやるような努力をするといいかなと思うことがあります。国がやるよりも、もっと加速させていけるのではと思うんです。例を上げるとすると韓国ですが、いい悪いは別としてある意味成功させていると思います。
売るための本であることは間違いないと思いますが、「英語をやらない」「英語は必要」の両方の意見があってもいいし、私たちは「英語は必要」というスタンスを貫かないといけないと思い紹介させていただきました。(名古屋Chapter Leader:清水健雄氏)
「何故英語が必要か」という部分を多くの人が頭では分かっていても、心で感じていない、またそれを説得力を持って大人たちが伝えきれていない、というのが事実であれば、英語を話せることで、自身と文化の異なった人達と恋愛が出来、愛情表現の違いや大きさ、懐の深さを感じられ、日本人と付き合うときとは違う別の世界へ連れていってくれる経験が出来る。多くの愛情表現の恩恵を受ける経験というのは人間をどれほど豊かにするか、ということも伝えていきたいです。(恋愛経験が多いわけでなくエラそうな事言えませんが)
もちろん、友情も然り。ビジネスも人との繋がりや情の部分も大なり小なり含んでいると信じています。
と、書いてて恥ずかしくなってきましたが(笑)、まずは身近に関心があることでガツンと頭ではなく、心に響かせればいいな、と思っています。心で感じたら人はエネルギーを持って勝手に動き始めると信じいるので。
要は、意思疎通しなければならない、ではなく、もっともっとこの人と心を通わせたいと思えるほどの人に巡り会えるかにかかっているにかな、と思います。そして、そう思える人が身近にいる人は本当にラッキーだと思います。(ETAJ 理事:中井翔)
私も清水先生同様海外勤務を経験しているものなので(現在進行中)、英語の重要性を実感しています。教養、知識、経験の方が大切、英語はただのコミュニケーションツール、通訳で対応できる、とおっしゃる方がいらっしゃいます。前者の重要性は本当にその通りだと思いますが、かといって後者の英語力が重要でない、という点については私は賛成できません。英語力が乏しいために、せっかくの知識・経験を半分も発揮できていない赴任者を見ているからです。一時的な特定の会議のみなら通訳対応で良いかもしれませんが、血の通った意思疎通が必要な日々のマネジメントでは全く通用しません。また、日本よりも責任区分を明瞭にして業務を遂行する欧米では(一般化してはいけないかもしれませんが)、明瞭な指示通達・伝達も求められます(日本のような阿吽の呼吸は通用しない)(そもそもの根本の論理力ももちろん重要ですが)。
日本の技術力は素晴らしい、優秀な技術者の方々が多いと感じます。しかし、海外における組織を動かすリーダーシップ、マネジメント、人材育成は弱みだと思います(もちろんその分野にも長けた素晴らしい方がいらっしゃることも事実です)。この点に、英語力(文化の理解等含む)の乏しさが少なからずとも影響していると個人的には考えています。グローバル企業と呼ばれる会社であってもです。
私も学生の皆さんに素晴らしい技術+α の英語力を身につけ、グローバルに貢献をして欲しいです。(ETAJ メンバー:松本ひろき氏)
ラッキーなことに、ETAJ には英語の先生だけでなく、英語を使ったお仕事をされている方もいらっしゃいます。また、一言で「英語の先生」と言っても、それぞれの海外経験の有無も教えている生徒さんの年齢や職業も様々。ですから本当に色々なご意見をシェアして頂いています。
今回も、実際に海外で活躍された経験のある会員の方達から貴重なご意見をお聞きすることが出来ました。
アメリカのビジネスオーナーとして、私自身「英語力」は最低限のマナーだと認識しています。ですから、どんなに能力がある人でも「英語力」が弱ければ一緒にビジネスをしたいと思いません。ご紹介した記事には「専門性があれば良い」とありましたが、「英語力」も「専門性」も持ち合わせている人は絶対にいます。そしてLinkedInを始めとする専門性の高い Social Network の進化と共に、そういった人材を世界中から探し出すことは可能な時代となっています。つまり、世界中の人間がライバルなわけです。グローバル社会とはそういうことです。「専門性があれば大丈夫」そう言って胡坐をかいている人を、誰が欲しいと思うでしょうか?相手とのコミュニケーションを促進させる言語を学ぶ努力さえできない人と、誰が自分の大事な時間や資産を使ってまで一緒にビジネスを行いたいと思うでしょうか?
私の主人はいわゆる「グローバル企業」勤めで、よく日本の企業とも一緒にビジネスをしています。その中で、日本文化を理解している主人を含め、彼のアメリカ人同僚は日本とのビジネスに限界も感じているのが現状です。英語力が不十分なだけでなく、会議の進め方も仕事の進め方も昔からの日本独自の慣習に従ったものが多く、それらはアメリカ人の目には効率的だとうつりません。もちろん、昔からの文化や慣習を大事にしたい日本側の気持ちも分かりますが、だからといってそこで他国に合わせずFlexibleでいることを拒否していたら、当然アメリカ側は日本とビジネスを行いたいと思わなくなります。
逆に、前述されているシンガポールを始めとする東南アジア諸国は、鈴木先生が仰っているように必死です。自分達の文化や慣習がどうであれ、自社の発展に良い結果をもたらすと考えれば、アメリカ式だろうとイギリス式だろうと、どんどんFlexibleな対応をしています。さて、欧米諸国はどんな国とビジネスをしたいと思うでしょうか?
海外に住んでいる人間からすると、日本の現状を楽観視することは決して出来ません。
もちろん、だからと言って悲観的になる必要はありません。私個人のブログでも紹介させて頂きましたが、日本人の英語力というのは、海外に出てみると「日本人の皆さんが思っているより出来ている」のです。ただ、そこで英語学習を終わりにしてはいけない。「英語は必要ないでしょ」と胡坐をかいてはいけない。せっかく大事な基礎の部分は結構出来ているわけですから、そこから練習量を積むような学習を心掛けて頂きたいと思います。
色々な意見はあるでしょうが、私達英語講師は、英語を学ぶことの重要性や海外に出ることの厳しさを伝えながら、それでいて中井先生が仰っているように、生徒には「頭で理解」ではなく「心で自発的に”やりたい!”」と思ってもらえるような環境づくりをしていくことが大切なのではないかと思います。
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