塩浜尚子先生にインタビュー

塩浜尚子先生にインタビュー

 

塩浜尚子先生はアメリカはサンディエゴにご在住。字幕翻訳家としての活躍を経て、今では「生活に密着した実践的な英語」を教えられています。

 


 

「正しいか間違っているか、ということよりも、この文脈・状況ではこのほうが自然である、ということを伝えるように。」

 

 

尚子先生は字幕翻訳をしていたと聞きましたが、それを辞め、英語教育に携わるようになったのは何がきっかけですか?

 

2009年9月に、家族でサンディエゴに移住したことがきっかけです。永住権(グリーンカード)を取得するまでは査証(ビザ)の関係で仕事はできなかったので専業主婦となりました。渡米当時、娘は5歳と1歳。長女はキンダーガーテンに入りましたが、次女はプリスクールにも入れない年齢だったので、たとえ働けたとしても子育てに専念せざるを得なかったでしょう。

 

2012年の秋にはカリフォルニア大学サンディエゴ校で日本語の授業のアシスタントをやることになりました。週に3回、大学1年生に日本語の雨を降らせる(=日本語を繰り返し書かせる/発音させる)仕事です。これが楽しかった!「教えるって楽しい」と気づいた出来事でしたね。日本語を教える資格をとることも考えたのですが、私が好きなのは英語。自分の英語力アップにも役に立つと考えて英語を教える資格(TESOL)をとることにしました。

 

2014~2015年の2年間で無事TESOLの資格を取得。せっかく資格もとったことだし、ご近所の日本人ママにボランティアで英語を教え始めました。さらに、大好きな映画やドラマを使って英語を教えたい、という気持ちがわいてきました。オンラインで英語を教えることが普通になっている今、実にいろいろな選択肢があります。英語と映画への情熱と英語教育の知識をうまく組み合わせたビジネスをどのように展開できるか、真剣に考えました。

 

そして気づいたことが1つ。毎日の生活で一番英語を使っているのはチャットだ、ということ。まずは、チャットを使って英語を教えてみよう!と思いました。2017年10月に、ブログ Naoko’s English Cafeを開設。楽しみながら英語力をアップできる情報、アメリカ生活の情報を発信しています。映画とドラマにでてきた使える英語フレーズはブログで紹介し、LINEチャットを使う英語レッスンを始めることにしました。

 

今は、どんな形で英語を教えていますか?

 

クライアントのニーズ・要望に合わせてカスタムメイドのレッスンを行っています。まずは事前アンケートで、どのような設定でチャットしたいかを詳しく聞きます。できるだけ「アメリカで生活している感覚」を持ってもらえるよう、工夫しています。

 

例えば、子どものプレイデートの約束がなかなかできない専業主婦の場合は、私がアメリカ人のママという設定にします。英語が基本ですが、ある程度チャットがたまったところで止め、日本語で訂正・アドバイスをします。また、ビジネス英語を磨きたい人とは、私がアメリカ人上司という設定にしてランチを食べながらの会話をしました。

 

このサービスも、実は完全なる見切り発車でスタートしました。具体的な部分まで入念にプランを立てたわけではなく、「あったらいいな!」を実現しようと思っただけなのです。私が渡米前に知ったら、絶対に申し込んでいたサービスだから(笑)。

 

しかし、見切り発車も悪いことばかりではありません。まずは、サンディエゴに来て日が浅い、ご近所の駐在妻3名にモニターになってもらいました。快くモニターを引き受けてくださる方に出会えたのはラッキーだったと思います。そもそもサービスをスタートしていなかったら、モニターも探さなかったわけですから。

 

何事もやってみないとわかりません。完璧な準備など無理です。とにかく始めてしまって、やりながら軌道修正していくという方法をとって正解だったと思います。

 

 

英語を教える際、気を付けていることはありますか?

 

正しいか間違っているか、ということよりも、この文脈・状況ではこのほうが自然である、ということを伝えるようにしています。

 

クライアントが送ってきた英語を訂正するときは次のように言います。

I would say ―――. (私だったらこう言いますね)

It would sound more natural if you said ――.(こう言ったほうが自然ですね)

 

あるとき、クライアントから鋭い質問をされたので、こう答えました。

That’s a good question.

「ネイティブは、答えるのが難しい質問をされたときにこう言って時間稼ぎをします」と説明しました。クライアントは「そうだったんですね!本当に良い質問内容だと鵜呑みにしてしまってました(笑)こういった事も教えていただけて楽しいです!」と言ってくれました。

こういう「英語の向こう側」も伝えられると「よっしゃ!」という気持ちになりますね。

 

 

今後のビジョンについてお聞かせください。

 

英語を教えるのは楽しいですが、ブログ記事を書くことにもワクワクしています。やりたいことをやって、ダメだったら違うことを試す、ということの繰り返しになるでしょう。人生、何がどう転ぶかわからないから面白い。そう思いながら毎日を生きています。ひょっとしたら1年後は英語を教えていないかもしれません。でも「英語」に関わっていることは、絶対に変わらないですね。

 

 

他の英語の先生方へのメッセージをお願いします。

 

数年前には、自分が英語を教えることになるとは思っていませんでした。でもそのおかげでETAJのみなさんに出会えたのだから、ラッキーです。オンラインの勉強会も楽しいですし、ためになる情報をシェアしあえる仲間がいるというのは心強いです。

これからも、お互いを高め合っていきましょう。

 

 


 

塩浜 尚子

 

中学時代、洋画に目覚めて字幕翻訳家になることを決意。慶応大学文学部(英米文学専攻)卒業。独立系映画配給会社に入社。広報、秘書を経て字幕制作部署へ。1998年に退社後、10年間「蒼井尚子」のペンネームで字幕翻訳に従事。劇場公開作品18本、ビデオ作品43本、テレビ放映用映画字幕11本などのほか、企画段階の脚本翻訳なども手がける。2009年、家族でサンディエゴに移住。しばらく子育てに専念する。2014~2015年にかけて、UCSD ExtensionのオンラインコースでTESOLの資格を取得。2016年、ご近所の日本人ママにボランティアで英語を教える。2017年、アメリカ生活と英語を楽しむブログ「Naoko’s English Cafe」を立ち上げる。同時にチャットで英語を教える「チャットde英語レッスン」もスタート。

 

ブログ:Naoko’s English Cafe

チャットde英語レッスン

連絡先:naoko-english-cafe@e-sparks-joy.com

 

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