小林真美先生にインタビュー
先日、初のご著書を出版された小林真美先生に、ビジネスパーソン対象に英語を教えることに関してお話をお伺いしました。
英語がしゃべれるようになると、自動的に“デキる”ビジネスパーソンになると、幻想を抱いている方に遭遇することもあります。
真美先生はどうしてビジネス英語を教えようと思ったのですか?
企業でのキャリアを卒業したのは、夫の海外転勤に帯同するためでした。
赴任先からの帰国後は、子供達の受験が続くタイミングだったことと、以前は仕事と家庭の両立を全面的に助けてくれていた両親も高齢になったことで、私自身が自分で時間をコントロールできる仕事をしようと考えました。ちょうどその頃、知人からビジネス英語を教えて欲しいと言われたのがきっかけで、英語を指導する世界に足を踏み入れました。
また、久しぶりに海外に暮らして日本を客観的に見た時、英語でのコミュニケーションという点では、アジアの諸外国と比べても随分遅れをとっていると感じていたので、何とかできないかと漠然と思っていたこともあります。グローバル企業で管理職を務める中、私自身も色々苦労してきたので、その経験からもアドバイスできることもあるのではないかと思ったんですね。
真美先生が感じられている、多くの日本人が共有する「世界への壁」を教えてください。
一番高い壁だと感じるのは、「自分の意見を言う」とか、「わからなかったら聞く」という行為に対し、私達日本人はなぜか躊躇してしまったり、遠慮してしまうことではないかと思います。 英語以前の問題です。
これは私達の受けてきた日本の教育にも原因があると思うのですが、そこを嘆いていても始まらないので、「自分はどう思うか」「それはなぜ?」という事を、日頃から意識して、言語化していくのが大事だと、生徒の方にはお伝えしています。
英語がしゃべれるようになると、自動的に“デキる”ビジネスパーソンになると、幻想を抱いている方に遭遇することもあります。当然ですがそれは大きな勘違い。話す内容に意味があって、それを論理的に説明できなければ、ビジネスパーソンとして高い評価を受けられないのは、日本語でも英語でも同じです。
真美先生はビジネスパーソン向けにご著書を出版されていますが、反響の多いポイントについて、いくつかご紹介していただけますか?
実は今回の本に関しては、ビジネスパーソンの方以外にも、様々な方面から感想をいただき、私自身も色々な事を学ばせていただいています。
先ずは英語で苦労しているビジネスパーソンの方からは、「具体的にどんな目標や心づもりで学習すれば良いのかがわかって、気持ちが楽になった」という声を多くいただきました。
「外資系企業で出世を目指す人達向けに書かれた本かと思ったけれど、実際には全ての日本人がグローバルな社会で生きていく上で大切なことが、英語やアメリカ人とのコミュニケーションという媒体を介して説明されていて勉強になった。 妻や子供達にも読ませます!」という嬉しい感想もいただきました。
また、ワーキングマザーの方からは「アメリカ人の働き方や考え方には、日本的働き方の非生産的部分の解消と、若手育成のために必要なヒントがあると感じた。」という感想をいただきました。 忙しいワーキングマザーは、職場でも明確なコミュニケーションを好み、時間を無駄にせずに集中して仕事をしたいと頑張っていますよね。
一方、未だに非効率でも時間をかけて仕事をするのを良しとするような企業文化も一部にあるそうで、そういった職場の方達にこの本で学んでいただきたいと感じたそうです。 その方は新人教育も担当されているのですが、曖昧な指示で終わらせるより、仕事の手順や期待することを明確に伝える方が、効果的な若手育成につながるのではないかと感じているそうです。
こういった私が当初予期していなかった視点からの感想もいただき、とても勉強になっています。
これからグローバルシーンで活躍していく日本のビジネスパーソンに一番伝えたいことはなんですか?
英語に苦手意識があったとしても、ビジネスの場では堂々と構えて欲しいなと思います。
そのためにも英語力だけでなく、自分の仕事の専門性を高める事、リーダーシップマインドや論理的に物事を説明できる力を日頃から養って欲しいと思います。語学だけでなく、そういった人間力を高める日々の努力が、グローバルで活躍できる道につながるのではないかと考えています。
真美先生と同じようにビジネスパーソンに英語を教えられている英語の先生方へのメッセージをお願いします。
ビジネスパーソンの方は皆さん忙しい一方、業務命令で嫌々英語・・・という方も多くいらっしゃいます。 そういった方には先ずは視点を変えて、英語ができればどんなわくわくする未来が待っているかを考えてみていただいてください。「その未来を手に入れるチャンスが今ここにあります!」。といった風に気持ちを切り替え、その気持ちを維持できるように日頃の指導をしていただくのが良いのではないかと思います。
それから、久しぶりに英語学習を再開される方の場合、英語の基礎(中学英語程度)をどのくらい覚えているかにはバラツキがあります。 自己申告に頼るのではなく、何らかの問題集やテストなどをやっていただいて、現状レベルを客観的に把握することも必要です。
最近はグーグル翻訳などを駆使して、相手に何とか用件が伝わる英文を書いている方も多いですが、実際には基礎的な文法や用語の使い方を間違っていたり、誤った思い込みをしてしまっている方がいます。急がば回れで、基礎固めは最初にしっかりした方が、後々のためにも大切ですよね。
また、繰り返しになりますが、楽しく、わくわくする気持ちを持ち続けるように指導していただけると良いのではないかと思っています。
私も指導者としては、まだまだ若葉マーク。これからもETAJを通して皆さんと学びあえる機会を楽しみにしています!
小林 真美
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。外資系証券会社を経てニューヨーク大学スターンスクール・オブ・ビジネスに留学してMBA取得。帰国後、フォード自動車の金融子会社に入社し、東京勤務を経てオーストラリアにあるアジア統括本部に財務マネージャーとして二年間勤務。その後、ジョンソン、日本アルコンで財務管理職を務め、外資系企業勤務は通算二二年に及ぶ。現在は会社経営者や管理職をはじめとするビジネスパーソンを対象に、ビジネス英語の個人指導や週末セミナー、留学準備のための英語指導、企業研修などを行う。英検1級・TOEIC970点
ウェブサイト:https://mamikobayashi-english.com/
連絡先:mami.kobayashi.english@gmail.com
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